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第2章 改革テーマのまとめ方

 その次、いきましょう。

 過去、こういうテーマを叩くときに、実はフェローの審査の試験とか改革の指導をしてもらいました。会社には、人事の評価をするときに人事考課というものがあって、必ず評価尺度を具体的にしてます。

 ところが、松下政経塾ではそれはありませんでした。だれの依頼でもなく、勝手に私がその評価尺度をつくりました。これは過去、私がずっと改革をいろんな形でやってって、このポイントを押さえてないとうまく意識が普及できなかったり、成功しなかったり、その着眼点を整理したものです。

 先ほども言いましたように、背景としては時代的な変化をとらえてるか、社会の要請をとらえているか、国際的な展開まで考えているか。

 その次に意義。上のパンのほうの話ですが、独自性。さっきも言いましたように、自分の持ち味や能力を生かすことができるか。他人のやってない自分だけのものかっていうことね。

 それから具体性。目で見てわかる、形にできる、だれでも納得できる。

 道具性。私はこれから何度か皆さんと会って、この研究の進捗を見せてもらうときに、「それをやってナンボのもんじゃねん」、と必ず聞きます。

 それから実現性。本当にできるの、着地できるのと。期間との関係がありますから、土台無理なものはやらないでください。いいじゃないですか、2年生になってからやったらいいんだから。とりあえず着地。最初のきっかけだけでもきちっと見える形で残すこと。それを、次につながるからって中途半端に絶対しないことです。

 それから効果性。本当に社会を変えるインパクトになるの、自己満足じゃないの。

 その次、実際のハンバーグの話になりますよ。目的です。今度は蛍をどう飛ばすかという話よ。戦略性。人脈はあるの、お金、どうするの。例えば、活動経費どうするの。情報収集力はあるの。なかったらつくってください。あとでその話もします。それを具体的にターゲット絞って集中するということです。

 それから、必ずストーリー性を持ってください。ホップ・ステップ・ジャンプ。つまり、蛍を飛ばすまでにもいろいろあるだろう。まずは保勝会(景勝を保存しようという民間団体)を攻めるかとか。

 その次のステップは、それを、さっき言った外堀を埋める、回りを埋める、そういう展開をしよう。ホップ・ステップですね。で、ジャンプは直接直訴するとか、あるいは文部省に意見書を出すとか、政経塾本体のほうの政治家を使って、まあ、多少は教育に関心のある塾生もいますから、代議士になったのもいますから、そこをつかまえて、実際に文部省を上からいじめてもらうとか。役所というのは政治家にいじめられると怖いですからね。国会の議会の中で、「おい、質問するぞ」と脅しかけたら、みんなピッピッピと動きますから。本当に、おもしろいぐらい動きますね、役人の方。そうですね。

 それは振子と現象は一緒なんですよ。トップがちょこっと動くと、振子っていうのはビュンビュン振るでしょう。一般の日本の組織っていうのはみんなそうできてます。ですから、下のほうでブリブリ振り回されるんじゃなくて、上から攻めるという手もあるわけです。

 その次、訴求力。そのためには、本当に意義のあることか。この間言った5つの条件、書きましたね。「意義」があるのか。「アメ」と「ムチ」があるのか。「義理人情」があるか、「浪花節」があるか。そして最後、「外圧」があるか。そういうようなことを入れ込まないと多くの人を巻き込めないということです。

 それからプロセス管理。いわゆる手段、方法ということです。5W1Hを明確にしてください。いつ、だれが、なにを、どのようにやるのか。これはあとで具体的に言います。それからPR、宣伝。既存組織の活用。専門家の巻き込み。一人ではできませんから。専門家というのは、問題についてよく知ってるプロと、私みたいに改革の手順、心のポイント、進め方のプロと両方います。

 それから成果。成果は大きく5つのパターンがあると思ってください。どれにするのか、選んでください。

 まず、メディアによる情報提供型。論文とか雑誌の投稿、テレビ・ラジオ。いいものができたら、テレビもラジオも取り上げるはずです。そのツテは、政経塾とて過去、ノウハウでたくさん持ってますから。だから、皆さんはまず玉としていいものをつくってください。

 その次、イベントによる巻き込み参画型。これはあくまで巻き込み参画をするということが、はじめてあのイベントに意味があるんです。ですから、フォーラムとかシンポジウム、勉強会。

 それから成功事例をつくる直接改革型。つまり、自分で直接やる。それからノウハウを指導していく。だから、さっきのJVの話っていうのは、どっちかというとノウハウをつかんで、それを広げていって指導していくというタイプだと思います。それからいろんな事例を集めてきて紹介する。これはスウェーデンの事例を紹介している山井君がやってる高齢化の考え方ですね。これは、先ほども言ったように、まだ認識の低いテーマを、認識を上げるための活動をするということです。

 それから、継続的な組織型ということで、認可された法人をつくったり、私のように株式会社をつくって継続的に商売としてやっていくという方法もあります。

 それから行政執行型。例えば、行政の窓口の対応を改善させたいとか、あるいは役人の行動を改善させたりとか、法律とか条例化とか予算化とか。山井君のグループホームも、この間言ったように予算がついたわけですね。あの人の活動がそこまで実ったということなんでしょうけれども、いずれにしてもこういう5つの成果というのが出てくるんではないかなということです。

 こういう成果を出すと必ず波及効果というのがあります。波及効果を整理すると4つになります。

 まず再生産性。成果が新たな資源を産むのか。例えば、事業収入が得られれば、次にまた再投資ができますね。だから、活動が広がります。あるいは社会的な評価。京都政経塾の塾生の論文が京都新聞で表彰されたということがあります。あれ、取り上げてもらうだけでも広がるわけですね。評価をいただいたと。ということは、その人に講演の依頼が来たら、またどんどんいけるわけです、自然に。それが再投資に回るわけですね。

 それから人脈の拡大。つまり、ある人と一緒にやりたい。「これはいいことだ、おれが紹介してやるよ」と。「蛍の専門家だったら徳島県美郷村にいるよ」と。つまり、皆さんの企画、やったことがよければ、みんな賛同してくれるわけですよ。どんどん輪が広がっていく。ということで、こういう再生産性があるかということですね。

 それから継続性。一過性のお祭り騒ぎで終わらないこと。次に生かせるか。生き甲斐ですからね。人生のテーマですからね。次にまた蛍とかが来たら、次になんか別のものを飛ばしてくださいということですね。 

 その次、発展性。ほかの人が勉強させてくれと来たり、あるいは他の地域にそれを持ってってもらって広がったり、他のテーマに転用できたりということがあるかと思います。それから蓄積性。これは重要です。いいですか。政経塾本体が、僕自身、反省してうまくいかなかったのは、この点が非常にお粗末だったなと。

 つまり、活動のノウハウとか。ノウハウもそうですよ、成果だけじゃなくて。そのつくっていく過程のプロセスの経験というのが、後からくる人たちに活きるんです。そのことがきちっと記録されて。だから、僕ら大学のときにやったのは、このレジメを毎回ファイルするんですよ。そうするといろんな刺激を受けて、きょう刺激されたことはこういう項目でしたと。それを受けてこういう活動展開をしましたと。今後の課題はこれですというのを毎回、毎回整理するんです。それをちゃんとファイルに綴じていくんです。

 そうすると、あとから見た人が、「ああ、最初はこんな粗いものが、順番にこういう指摘をされて、こういう活動をして、順番に成長していったんだな」、というノウハウがわかります。そのことを必ずやってください。私ども政経塾の場合はそれがなかったんで、後輩は全くゼロから経験しなきゃいけなかったんです。

 仕方がないから、人のデータベースだったんですよ。過去、アメリカの行財政のシティ・マネージャー制度は、誰が研究したというのを人づてにたどって、だれだれ先輩に会いに行く。そこで口頭で教えてもらってたんです。ところが、先輩もどんどん偉くなってきますから、忙しくなってなかなか会えなくなってくる。こちらも行けなくなってくる。ですから、これがなかったんですよ。これから皆さんが新しく京都政経塾をつくっていくわけですから、創成期ですから、必ずこのことをやっていただきたいなと思います。

 それと、今後の課題ということですね。これは発展性ということなんですが、その研究をやって自分はどこまで成長するのか、この活動を通じて。人は自分の能力が 100だとすると、 120ぐらいの目標を掲げたときに一番成長します。 150だとしんどくてやめます。開き直っちゃいます。

 ですから、そこに目標を当てるということです。例えば、期間が短い中でも時間をやり繰りしてやってみるとか、あるいは、さっきのアンケートをとらなきゃいけないけど、自分はツテがないからなと。じゃ、もう徹底的にみんなに頼みまくるとかね、まずここから。そのことを通じながら、いろんな人に出会うでしょう。皆さんのテーマに共鳴してくれる人もいるし、なんだ、それやってナンボのもんやねんと。

 緑の本(システムズ・アプローチによる改革の実践)開いてください。最初に言ってきときます。36ページです。

 人間の種類というのはこの5つのパターンに分かれるんですよ。なんでも好き好んでどんどんやっていく改革者、冒険者。これが3%です。それから、企画がまとまってきて現実性を帯びだしたら「よっしゃ、これ、やったろう」というのがその次の13%の層です。これは常に集団のリーダーやなんかをしたいという人たちです。

 つまり100人に会ったら、この人数の比率だけの層がいると思ってください。だから、なんかバカなこと言われたとか、お前、バカじゃねえかとか言われても、はっきりいって、これはどこのタイプなんだなと腹で思ってたらいいです。改革が進めば、順番にこの人たちが全部洗脳されてきますから。

 それで改革の大きな分岐点というのは、実は最初の1番と2番が変わる16%の段階です。ここでドッカーンと大化けしますから。ということを前提においてやったら、なにも逃げる必要はありません。だから、頭の固いやつにぶつかったときには、バカが何言ってんだ、このタイプだな。まあ、黙って放っておけとかね、気楽になるんです。

 その次、人生のテーマ創出性と書いてます。ですから、この軸を是非この研究を通じて見出してください。そうしたら、京都政経塾に払ったお金というのは、おそらく100倍ぐらいの価値を持って皆さんに返ってくるでしょう。

 それからキャリアの開発性。これは直接皆さんに関係するかどうかわかりませんが、茅ヶ崎の本体のほうはいつもこれで悩むんですよ。その研究を通じて「じゃ、次の選挙にどう打って出るのか」とか「じゃ、次、君のポジションはどうするんだ」とかね。就職活動も絡んでますから、茅ヶ崎の場合は。そうすると、頭の中がチャンポンになってくるわけですわ。

 この人たちは改革の草ダンゴの下のダンゴから考え出すんですよ。ところが、みんなにウケようと思ったら上を言うんですよ。だから、おダンゴの串が通らずに、もうゴチャゴチャになっちゃってるわけですわ。それだから、みんなに言うとき、インパクトがないんですよ。だから、この軸を通して言ったら、どんな選挙でも僕は通ると思ってます。世の中の人はバカじゃないから。1回でダメだったら2回でも通ると思います。非常に安いお金でも通るでしょう。なぜならば、一番上はみんなのためになるでしょう。で、自分の真ん中はやりたいことやってるでしょう。だから、必ず選挙に通る。

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